No.25 動物の救急救命処置
前回は、私が救急救命講習で習ったことをお話をしました。
では、動物で救急処置が必要な状態になった場合はどうなのでしょうか?
基本的に人と同様の対処となります。
ですが、違わざるを得ない部分もあります。
それは、救急車が呼べないことです。
(今の時代、飼っている動物は家族同様ですので、呼びたくなる気持ちは分かりますが、基本的には、人命を救うためのものです。)
①安全場所の確認
家や庭などで倒れていることが多いと思いますが、室内でもガスによる中毒や、路上での事故や発作などでは、人にとっても危険な場所の場合もあります。
その場合は、自己の安全をまず優先し、確保してください。
それが大丈夫であれば安全な場所へ移動させて下さい。
力が抜けた状態の動物は、普段よりも抱えずらくなり重たく感じます。
一人で運べない場合は、周囲の人に手伝ってもらい、安全な場所に移動させて下さい。
②意識と呼吸の確認
人の救命時と同様に意識の確認をして下さい。
名前を呼んだり、さすったり軽く身体を叩いたりしてみて下さい。
人の場合ならここで救急車を呼びますが、動物の場合は、呼吸の確認をして下さい。
脇腹のあたりを見て、呼吸をしているか確認します。
あえぐような口を金魚のようにパク、、、パク、、、とする呼吸は、死戦期呼吸といい、ほとんど呼吸していない状態です。
③動物病院に電話
動物病院に電話して状況を伝えて下さい。
かかりつけが休診日や夜間だった場合、かかりつけの先生は電話に出られないかもしれません。
その場合は、近くで他の病院か、夜なら夜間対応してくれる病院に連絡してみてください。
(休みでも予定が空いていれば対応してもらえる場合もありますし、かかりつけならカルテ記録からこれまでの状態を把握しやすいです。また、普段から前もって、かかりつけが休みの時間帯に診てくれる動物病院を調べておくと良いと思います。)
④病院へ連れて行く
電話した動物病院の指示に従い、病院へ連れて行って下さい。
<移動中にできること>
身体が冷たい場合、毛布でくるんだり、カイロやお湯を入れたペットボトルをタオルでくるんで身体に当てて温めて下さい。
熱中症が考えられ身体が熱い場合は、身体を濡らしたり、アイスパックなどで冷やして下さい。
ケイレン中も体温が上がりやすいので、身体が熱ければ冷やして下さい。
(ケイレン中に下を噛み切ってしまうのではないかと考え、口に手を入れようとされる方がいますが、絶対にしないで下さい。ケイレン中は意識がなく、思いっ切り口を噛み締めることがあるため、飼い主さんであっても指を噛み切られる可能性があります。自分の舌を少し切ることはありますが、大きく舌を噛み切ることはほとんどありません。また、ケイレンを起こした時は、大きな声で呼びかけたり、揺さぶったりするとそれが刺激になってケイレンが治まり難くなる可能性があるので、あまり刺激しないで下さい。)
⑤呼吸がなければ心臓マッサージ
呼吸がなければ、電話している最中も、病院へ連れて行く間も、心臓マッサージを続けて下さい。
ただ、お一人の場合、車を運転しながらの心臓マッサージは危ないので止めて下さい。
心臓マッサージの仕方も基本的には、人と同様です。
胸の厚さの1/3くらいが凹むくらいに心臓の位置を圧迫し、1分間に100回を目安にマッサージをして下さい。
人と異なる点は、胸の形が、人は正面と背中が平べったいですが、犬猫の多くは正面が細い卵円型になっています。
そのため、地面に押し付けて胸を圧迫しても安定せず、あまり効果的ではありません。
手のひらで胸が掴める大きさの小型犬や猫なら、片手の親指と他の四指で掴むように胸を圧迫して下さい。
中型犬以上の場合、胸の下にタオルを厚めに置いて、押しても身体が斜めにならないようにして人にするように心臓マッサージをすると効果的です。
動物の場合、救急車が迎えに来てくれないので、早く動物病院へ連れて行くことが肝心になります。
そのために、日頃からすぐにかかりつけの電話番号がわかるようにしておいたり、かかりつけが休みの時に診てもらえる病院を調べておくと良いと思います。