スタッフ日記

こんにちは、あま動物病院の関です。
初回から期間が空いてしまいましたが、今回は第2回で脂肪がもたらす腸内細菌への影響についてです。


食事に含まれる脂肪分の割合によっても、腸内細菌叢(≒腸内細菌バランス)は変化します。

たしかに食事は腸内細菌のエサにもなるので、細菌の種類に影響しそうですよね?


実際に遺伝的な系統の異なる5種類のマウスに高脂肪食を与えると、腸内細菌叢が平均3.5日で変化しました。また、人でも脂肪の量の違う食事により増加する細菌が異なることが研究で示されています。

マウスの実験ですが、高脂肪食による腸内細菌叢の変化が歯周病を悪化させるという研究結果が新潟大学より出ています。


そして、高脂肪食で育った肥満マウスの腸内細菌を肥満ではないマウスに便移植すると腸の炎症マーカーの増加だけではなく、脳の炎症兆候も認められ、不安増加や記憶障害、行動異常を示すようになります。

また、高脂肪食で飼育されていた母マウスの仔マウスは対象群と比べて社会性行動の異常が認められました。
この仔マウスは、腸のロイテリ菌などの菌種の割合が減少していたのと、脳の視床下部からのオキシトシンというホルモンの生産量も低下していました。
そして、この仔マウスにオキシトシン投与すると社会性行動の異常が改善したという結果だったことと、ロイテリ菌を投与してもオキシトシンのレベルが上昇して社会性行動の異常の改善が認められました。
つまりこれは、母マウスの高脂肪食摂取が仔の腸内細菌叢や中枢神経の発達に影響を与えていることを示しています。マウスの実験ではありますが、他の哺乳類でも同じような影響が出る可能性は十分にあると思います。


その他にも、人で高脂肪食を摂取すると、肝臓ガンの発生率が増加することが示されています。高脂肪食を摂取すると、肝臓から作られて十二指腸へ分泌される一次胆汁酸の量が増加します。そして、悪玉菌によって一次胆汁酸から作られる二次胆汁酸も増加していきます。この二次胆汁酸は、腸から吸収されて肝臓へ運ばれて、肝臓に対して発がん性を示すことが報告されています。

野生下では、いつ食事にありつけるかわからないため、高エネルギー源である脂肪分は貴重であり、動物も美味しく感じることで積極的に摂取しようとします。

おうちのわんちゃんねこちゃんが美味しそうに食べるからと脂肪分の多い食事やおやつを与えていると、腸内細菌叢がおかしくなり、様々な疾患を引き起こす可能性があります。

また、ダイエット用の低カロリーの食べ物だったとしても、食べる量が増えれば、摂取量が増えるので、同じこととなってしまいます。

私自身も耳の痛いことですが、皆さん自身にもおうちのわんちゃんねこちゃんにも気をつけてみてください。