スタッフ日記

こんにちは!
名古屋市、大治町、清須市、津島市、稲沢市、愛西市の近隣にあるあま市あま動物病院の獣医師の関です。

最近では雪が降り、まだ寒い日が続いていますね。
ですが、先日実家の親から写真が送られてきました。


ご近所の家の福寿草だそうです。
きれいですね。
春が近づいていることを感じます。

春というと私が思い浮かぶのは職業柄、寄生虫のこと。
特に春先からはノミが活発になり始めます。
ペットを家族として大切にしている皆さまにとって、ノミによる被害は見過ごせない問題です。
今回は、ノミの寄生予防の重要性と、温暖化や室内の暖かい環境がもたらす影響についてご紹介します。

1. ノミがペットに与える影響とは?
2. ノミが媒介する主な病原体(人畜共通感染症)
3. 温暖化と室内環境がノミ予防に与える影響
4. ノミ予防のためにできること
5. おわりに


1. ノミがペットに与える影響とは?

ノミは、ペットの皮膚に寄生するだけでなく、以下のような健康被害を引き起こす可能性があります。

・皮膚炎やかゆみ:ノミが吸血する際に、アレルギー反応を起こす成分が混入するため、ペットが強いかゆみを訴えることがあります。
・二次感染:ノミによるかきむしりが原因で、細菌感染や皮膚の炎症が起こるリスクが高まります。
・病原体の媒介:ノミは、場合によってはバクテリアや寄生虫の媒介者となり、ペットの健康を脅かす病気を引き起こすことがあります。


2. ノミが媒介する主な病原体(人畜共通感染症

バルトネラ・ヘンセラ (Bartonella henselae)
・概要:バルトネラ・ヘンセラは、主に猫を宿主とする細菌で、「キャット・スクラッチ病(猫ひっかき病)」の原因として知られています。
・媒介のメカニズム:ノミは感染した猫の血を吸うことでこの細菌を取り込み、ノミの体内や排泄物中に存在させます。猫が自分の体を舐める際、ノミの排泄物が傷口や爪に付着し、それが人間に感染することがあります。
・影響:人間では、リンパ節の腫れ、発熱、倦怠感などの症状を引き起こす場合があり、特に免疫力が低下している方は重症化するリスクもあります。

リケッチア・フェリス (Rickettsia felis)
・概要:リケッチア・フェリスは、ノミを介して動物や人に感染する細菌で、「ノミ媒介性発疹熱」の原因となります。
・媒介のメカニズム:感染したノミがペットや人に吸血する際、細菌が血液中に侵入することがあります。また、ノミの排泄物や体液により接触感染が起こる可能性もあります。
・影響:感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛、皮疹などの症状が現れることがあり、特に発症初期には見逃されがちなため、注意が必要です。


瓜実条虫(サナダムシ)
・概要:瓜実条虫は、犬や猫の消化管に寄生する寄生虫です。ノミは中間宿主でノミの体内で発育し、最終的には犬猫に寄生します。
・媒介のメカニズム:ペットが毛づくろいで瓜実条虫に感染しているノミを飲み込むことで寄生し、腸内で成虫となります。
・影響:感染したペットは、消化不良、体重減少、時には下痢などの症状を呈することがあり、特に子犬や子猫は顕在化しやすいため注意が必要です。人に感染することもあります。


3. 温暖化と室内環境がノミ予防に与える影響

ノミは卵やさなぎの状態で寒さや乾燥に耐えて、13度以上の気温で孵化して活動化します。

温暖化の影響
地球温暖化により、地域ごとの気温が上昇し、従来はノミが活動しにくかった季節でも、温暖な気候がノミの発生を助長しています。その結果、今後は従来の「ノミの季節」にとどまらず、通年でノミ対策が求められる状況に変わりつつあります。

室内環境の温かさ
現代の住宅は断熱性や暖房設備が充実しており、外気温に関係なく室内は暖かい状態が維持されています。室内にいるペットにとっても、ノミが繁殖するための適した環境が整ってしまうため、外出の有無にかかわらず、常に注意が必要です。

このことから、従来の季節限定の予防策では十分ではなくなっており、最近では通年での寄生虫予防を推奨しています。


4. ノミ予防のためにできること

・ブラッシングとシャンプー
定期的なブラッシングやシャンプーは、ノミの早期発見と皮膚の清潔を保つために効果的です。特に、首周りや尻尾の付け根など、ノミが好む部分を重点的にチェックしましょう。

・環境の清掃
ノミ寄生があれば、ペットが過ごす寝具、カーペットなどにはノミの卵や幼虫、サナギが存在しています。こまめに掃除し、除去することも大切です。

・予防薬の使用
ノミが1匹いると卵やサナギが100個いると言われます。卵やサナギは目で発見することは難しく、ブラッシングやシャンプー、生活環境の掃除ではどんどん増えていくノミをすべてを除去することは不可能です。
一番効果的な方法は、獣医師と相談の上、ペットに合ったノミ予防薬を使用することです。ノミ予防薬は全性が高く、駆虫率もほぼ100%です。成虫だけでなく卵やサナギの孵化も阻害する効果のあるものもあり、とても効果的です。また最近ではフィラリアや消化管内寄生虫の予防も一緒にできる薬、3~4カ月に1度の投与で済む薬もある​ので、総合的な健康維持のためにおすすめです。


5. おわりに

ノミ対策は、ペットの健康を守るための基本的なケアの一環です。
温暖化の進行や室内環境の変化により、これまで以上に注意が必要な時代となっています。
あま動物病院では、飼い主の皆さまと共に、ペットの快適な生活環境を守るために最新の情報と対策を提供していきます。
ご不明な点やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。
ペットの健康は家族の健康です。
日々のケアと適切な予防で、安心して楽しい毎日をお過ごしください!