犬の子宮蓄膿症の原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清州市、大治町のみなさん、こんにちは!
あま市のあま動物病院です。今回は犬の子宮蓄膿症の症状や原因、治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
子宮蓄膿症とは?
子宮蓄膿症は、子宮の中に膿が溜まってしまう病気で、雌犬でよく見られます。治療をせずに放っておくと亡くなってしまうこともある危険な病気のため、犬を飼育する上で特に注意が必要な病気の1つです。
子宮蓄膿症の症状
子宮蓄膿症でよく見られる症状としては、下記の様なものが挙げられます。
・食欲不振
・発熱
・低体温
・多飲
・多尿
・嘔吐
・お腹が張る
・陰部が腫れる
・膿が陰部から排出される
多飲や多尿は一見子宮と無関係な様に感じるかもしれませんが、細菌の毒素によって引き起こされる腎臓の障害によるものと考えられます。
経過は様々ですが、急性の子宮蓄膿症の場合は1週間程度で重篤化してくることが多いため、なるべく早期に治療を始める必要があります。
また、陰部からの排出物が少ない症例では、排出物が多い症例に比較して子宮内に膿が貯留しやすく、比較的中毒症状が重くなりがちです。
場合によっては播種性血管内凝固(DIC)と呼ばれる状態に陥り、多臓器不全を起こしてしまうこともあります。
子宮蓄膿症は治療が遅れると亡くなってしまうことも多い病気です。子宮蓄膿症に特異的な症状はあまりなく、判断に迷うことも多いとは思いますが、上記の様な症状が少しでも見られる場合には早めに動物病院を受診し、獣医師の診察を受ける様にしましょう。
子宮蓄膿症の原因
子宮蓄膿症はホルモンバランスの異常や細菌の感染が原因です。子宮蓄膿症は6歳以上の犬で発情後2ヶ月ごろの時期に発症することが多いです。中でも出産経験のない犬や繁殖経験はあるが長い期間繁殖を休止している犬で発症が多く、繁殖を繰り返している犬ではあまり見られません。犬種による差は特にありません。検出される細菌のほとんどは大腸菌で、外陰部から侵入することが多いと考えられています。
子宮蓄膿症の診断
子宮蓄膿症を診断するためには、症状の聴取や身体検査、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などを行い、総合的に判断します。
身体検査では、陰部からの排膿の確認やお腹の張り、体温などを確認します。
血液検査では白血球(中でも好中球と呼ばれる細菌感染の際に増加する細胞)の増加や炎症に関する数値(CRPなど)の上昇が認められることが多いです。腎臓の数値(BUN)の上昇や貧血による赤血球に関する数値の低下、血小板数の減少なども確認されることもあります。
レントゲン検査やエコー検査では子宮の腫れや子宮内の貯留液が確認できます。
子宮蓄膿症の治療
根本的な治療を目指す場合は卵巣と子宮を摘出する手術を行うのが最も確実な方法です。しかし、この方法により治療を行うとその後繁殖を行うことができなくなってしまいます。
その他の外科的治療方法として、お腹を開いて子宮内の膿を取り除き、カテーテルを装着する方法もあります。この方法では子宮を残すことはできますが、あまり実施されることはありません。この場合はホルモン剤や抗菌薬の投与も合わせて行うことが重要になります。
内科的に治療していく場合にはホルモン剤により子宮の収縮を促したり、抗菌薬を投与したりしつつ点滴を行います。内科的治療では子宮を残すことができますが、根治が難しい場合や再発が多いこともあり、手術が可能な症例では場合はあまり勧められません。
子宮蓄膿症の予防法
避妊手術を行うことで発症を予防することができます。繁殖させる予定がない場合は若いうちに避妊手術を行うことで子宮蓄膿症をはじめとして様々な病気の発症を予防することができます。
長く繁殖に供していない犬でも発症することが多いため、引退した繁殖犬を引き取った場合などでもはやめの避妊手術をお勧めします。