犬のクッシング症候群の原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清州市、大治町のみなさん、こんにちは!あま市のあま動物病院です。
今回は犬におけるクッシング症候群の症状や治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
クッシング症候群とは?
クッシング症候群は副腎皮質機能亢進症とも呼ばれ、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種であるコルチゾールが体内で過剰に増えてしまうことにより様々な症状を引き起こします。犬では猫や人と比べて発生頻度が多く、よく見られるホルモン病の1つです。
クッシング症候群の症状
犬ではクッシング症候群を発症すると、コルチゾールの過剰により下記のようなさまざまな症状がよく見られます。
・多飲
・多尿
・食欲増加
・お腹が張る
・皮膚が薄くなる
・脱毛
・皮膚の色素沈着
・皮膚の感染症
・皮膚の下の内出血
・呼吸が早い
・筋力の低下
また、免疫機能の低下も生じるため、膀胱炎などの感染症を伴うこともあります。膀胱炎では頻尿症状や血尿などが見られます。糖尿病の併発がよく見られます。糖尿病の場合は多飲・多尿や体重減少などの症状を呈していることが多いです。
クッシング症候群の原因
クッシング症候群はコルチゾールが過剰になることで引き起こされますが、その仕組みによって、大きく以下の2つに分類されます。
①下垂体性
犬のクッシング症候群の8-9割はこちらに分類されます。脳の下垂体と呼ばれる部位からは、「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」と呼ばれる副腎皮質からのホルモン分泌を増加させる作用をもつホルモンが分泌されています。下垂体になんらかの異常が生じることで、ACTHの分泌が増加し、副腎からのホルモン分泌が過剰に刺激されることで、体内のコルチゾールが過剰になります。
②副腎腫瘍
犬のクッシング症候群の1-2割がこちらに分類されます。副腎に腫瘍が発生し、それによりコルチゾールが過剰に分泌されてしまい、クッシング症候群の原因となります。
クッシング症候群の診断
まずは症状の聴取や視診、触診などを行い、クッシング症候群に典型的な症状があることを確認します。クッシング症候群を疑う症状がある場合、血液検査、ACTH刺激試験、エコー検査、CT・MRI検査などを行います。
・血液検査
好中球、単球の増加やリンパ球、好酸球の減少が見られることが多いです。ALPの上昇もよく見られ、9割程度の症例で見られます。そのほかにはALTの上昇やコレステロールの上昇、クレアチニンの低下、トリグリセリドの上昇、血糖値の上昇も見られることがあります。
・ACTH刺激試験
合成ACTH製剤を投与することで副腎皮質からのコルチゾール分泌を最大化させます。
・デキサメタゾン抑制試験
正常な動物では、デキサメタゾンを投与すると「ネガティヴフィードバック」と呼ばれる仕組みが働き、血中のコルチゾールが低下します。クッシング症候群ではこの仕組みが機能していないため、コルチゾールが抑制されません。
・エコー検査
副腎の大きさを確認します。肥大していれば、副腎腫瘍の可能性が高くなります。
・CT・MRI検査
下垂体性の場合、CTやMRIによる画像検査を行うことがあります。画像検査をもとに、摘出か、内科療法かを判断します。
クッシング症候群の治療
下垂体性か、副腎腫瘍によるものかによって治療が異なります。
・下垂体性
下垂体性の場合は下垂体の切除が根本的な治療法になります。しかし、手術による合併症のリスクや下垂体からはその他にもいくつかのホルモンが出ているため、下垂体の切除だけでは終わらず、生涯にわたるホルモンの補充療法が必要になるため、当院ではお勧めしておりません。下垂体性の場合には、放射線療法または内服によりコルチゾール分泌を抑制する治療を状況によりご提案しています。内服による治療は、生涯にわたる投薬が必要です。
・副腎腫瘍
副腎の摘出が必要になります。基礎疾患などがあり手術が難しい場合は内科療法を行うことになります。
クッシング症候群の予防
クッシング症候群は基本的には予防ができません。そのため、早期発見・早期治療が大切です。クッシング症候群を疑う症状が見られた場合には、早めに受診する様にしてください。