犬のパテラとは?原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清須市、大治町のみなさん、こんにちは!
あま市のあま動物病院です。今回は犬のパテラでよくみられる症状や、治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
パテラとは?
「パテラ」は英語では「patella」と書き、「膝蓋骨(膝のお皿の骨)」を意味します。そのため、動物の医療では「膝蓋骨脱臼」という病気のことを簡易的に「パテラ」と呼ぶことがあります。膝蓋骨脱臼(以下パテラ)は膝蓋骨が大腿骨にある溝(滑車溝)から外れてしまい、膝の内側または外側に脱臼してしまっている状態を指します。
パテラの症状
パテラで見られる症状は、膝蓋骨の脱臼の程度により様々です。パテラの重症度はグレード1-4で評価され、それぞれのグレードで見られる症状は下記の通りです。
・グレード1
膝蓋骨は普段は正常な位置に収まっているが、手で押すと脱臼させることができる。普段は症状が見られず、たまに足を挙げたり痛がったりする。
・グレード2
膝蓋骨が普段は正常な位置にあるが、頻繁に脱臼する状態。手で押すと正常な位置に戻すことができる。無症状のこともあるが、足を引きずることもある。
・グレード3
膝蓋骨は普段から脱臼しているが、手で押して正常な位置に戻すことができる。歩き方に異常が見られる。
・グレード4
膝蓋骨は常に脱臼しており、手で押しても正常な位置に戻すことができない。歩き方に異常が見られ、足を上げて地面につくことができないこともある。
パテラの原因
後ろ足の発育異常により膝蓋骨と大腿骨の位置関係に異常が生じることで発症します。先天的なこともあれば、発育の過程で発症することもあります。ポメラニアンやトイプードル、チワワなどの小型犬でよく見られます。小型犬の多くは内側に膝蓋骨が脱臼します。
パテラの診断
身体検査を行い、膝蓋骨が緩んでいたり、脱臼していたりするのを触って直接確認します。触診により骨の変形が疑われる場合や、治療として外科手術をする場合にはレントゲン検査も行い、膝蓋骨の位置や骨の変形の程度を確認します。
跛行の症状を認めたり、後肢の筋肉の低下を認めた場合、前十字靭帯断裂を併発していることもあるため、その確認も行うことがあります。確認には触診、レントゲン検査、エコー検査などを実施します。
パテラの治療
推奨される治療法はグレードによって異なります。グレードが1-2で明らかな症状がない場合には、生活環境を整えて足に負担の少ない生活をしていただくことをお勧めしています。症状がある場合には、消炎鎮痛剤を使いつつしばらく安静にしてもらう保存療法が選択されることが多いです。しかし、グレードが低くても消炎鎮痛剤の効きが悪かったり、再発を何度も繰り返したりする場合には外科手術がすすめられます。グレード3-4の場合には基本的には外科手術が推奨されますが、5歳以上の場合には、外科治療の効果が乏しいことが多いため当院では推奨しておりません。その他に麻酔リスクが高い場合や費用面での問題などがある場合には保存療法を行う場合もあります。また、グレード4では関節の重度の変形を伴っていることが多く、5歳未満であっても手術を行っても症状が完全に良くなるとは限らないため注意が必要です。外科手術は、骨を削ったり、筋肉を切ったり、関節の組織を縫い縮めたりして、人工的に膝蓋骨が外れない状態にしており、完全に正常な状態にしているわけではないため、将来的に正常な膝より早期に関節炎になりやすいと言われています。それでも外科手術が推奨されるのは、外科手術により ①脱臼による痛みをなくすこと、②膝関節や骨の変形を抑制すること、③膝関節を安定化させることで将来の前十字靭帯断裂のリスクを減らすこと、ができるからです。
パテラの予防
パテラを予防するためには膝関節への負担を軽減することが大切です。
フローリングの上を走り回って滑ったりすると、膝へかなりの負担がかかります。その様な場合には、滑り止めのマットを敷いたり、滑りにくくするワックスを塗ったりしてあげるといいでしょう。爪や足の裏の毛が伸びていても滑りやすくなるため、定期的なお手入れも有効です。階段を駆け上がったり、ソファに飛び乗ったりする動作も膝へ負担をかけます。これらの動作もさせないように心がけましょう。
肥満も膝への負担を大きくします。太り過ぎている場合にはダイエットするといいでしょう。過度な運動によるダイエットも膝の負担になるため、食事管理中心のダイエットがおすすめです。
すでにパテラを発症したことがある犬で再発予防をしたい場合や高齢の犬の発症予防にはサプリメントもおすすめです。関節に良い成分が含まれているものを選んで飲ませてあげると良いでしょう。何を与えたらよいかお悩みの方は、獣医師がお勧めのサプリメントをお伝えさせていただきますので、診察時にお気軽にご相談ください。