犬の甲状腺機能低下症とは?原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清須市、大治町のみなさん、こんにちは!
あま市のあま動物病院です。今回は犬が甲状腺機能低下症を発症してしまった場合に見られるの症状や治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺は喉のあたりにある小さな組織で、サイロキシン(T4)やトリヨードサイロニンといった甲状腺ホルモンを分泌し、体の代謝や成長を調節しています。甲状腺ホルモンの分泌は脳の下垂体と呼ばれる部位から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されています。
甲状腺機能低下症にかかると、甲状腺ホルモンの作用が不足することにより様々な病気を引き起こしてしまいます。
甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症を発症すると、甲状腺ホルモンの欠乏により代謝の低下や身体機能の低下が生じます。その結果、以下のような症状が現れることがあります。
・活動性が低下する
・太る
・疲れやすい
・寒さに弱くなる
・毛並みが悪くなる
・皮膚に色素沈着が見られる
・脱毛や薄毛、外耳炎や皮膚感染症などの皮膚病変が見られる
・無気力になり、あらゆることに対して無関心になる
・脈が遅い
・顔がむくみ、悲しそうな顔になる(悲劇的顔貌)
これらの症状がよく見られるものになりますが、これら以外にもまれに顔の神経が麻痺するなどの神経症状が見られることもあります。
甲状腺機能低下症の原因
犬の原発性甲状腺機能低下症が発症する原因としては、免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎、甲状腺組織が萎縮してしまう特発性甲状腺萎縮、腫瘍による甲状腺組織の破壊などが考えられています。
二次性甲状腺機能低下症の場合は下垂体の形成異常や抑制、破壊などによる甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌障害が原因になります。
成犬の甲状腺機能低下症の場合、99%以上が原発性です。
甲状腺機能低下症の診断
上記で挙げたような症状が見られる場合や血液検査で高脂血症が見られるなどの場合は内分泌学的検査を実施します。
内分泌学的検査では遊離T4濃度やTSHの測定を行います。
遊離T4濃度の低下とTSH濃度の上昇が見られた場合には原発性甲状腺機能低下症と診断されます。
T4濃度の低下が見られ、TSH濃度の上昇が見られない場合には甲状腺機能低下症ではなくユウサイロイドシック症候群という病気である可能性があるため注意が必要です。ユウサイロイドシック症候群は甲状腺機能正常症候群とも呼ばれ、甲状腺機能に異常がないにも関わらず、その他の病気によって甲状腺ホルモンの数値が低くなってしまう病気です。ユウサイロイドシック症候群が疑われる場合にはエコー検査やレントゲン検査なども行い、原因となる病気を特定することが必要となります。
甲状腺機能低下症の治療
甲状腺ホルモン製剤の投与が必要になります。基本的にはサイロキシン製剤という種類の薬が使われ、一生涯にわたって投与し続ける必要があります。投与し始めて1週間程度から徐々に効果が現れ始めます。ほとんどの症状は投薬により改善が期待できますが、神経症状は完全には治らないこともあるため注意が必要です。
治療中は定期的に血液検査を行なって甲状腺ホルモンの数値を調べ、治療効果の確認や薬の投与量の調整を行う必要があります。
また、ユウサイロイドシック症候群の場合には原因となっている疾患の特定とその治療を行います。ユウサイロイドシック症候群では基本的にはサイロキシン製剤の投与は行いません。
甲状腺機能低下症の予防
残念ながら、甲状腺機能低下症を予防する効果的な方法はありません。そのため、甲状腺機能低下症については早期発見・早期治療が重要になります。甲状腺機能低下症を疑う症状が見られる場合には早めに受診してください。1年に1回程度の健康診断を行い、その際に血液検査をすることもおすすめです。