疾患紹介

あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清須市、大治町のみなさん、こんにちは!
あま市のあま動物病院です。今回は犬の慢性腎臓病の症状や原因、治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。

慢性腎臓病とは?

慢性腎臓病とは、腎臓に慢性的な病変が生じ、その進行が機能的および構造的な腎障害を引き起こす状態のことを指します。獣医学では「慢性腎不全」と呼ばれることもあります。高齢での発症が多く、一度発症すると数ヶ月から数年にわたって進行していき、最終的には腎不全や尿毒症に至ります。

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病はステージ1から4に分けられ、それぞれのステージで見られる症状やその重篤度は変わってきます。
<ステージ1>
このステージでは症状はほとんど見られません。残っている腎機能の割合は100-33%と言われています。
<ステージ2>
ステージ2でもほとんど症状は認められないか、症状はあっても軽度であることがほとんどです。このステージでは残っている腎臓の機能は33-25%と言われています。
<ステージ3>
このステージから明確な症状が見られるようになります。この段階では残存している腎機能の割合は25-10%と言われています。具体的な症状としては、多尿や体重減少、脱水、貧血などが多く、進行すると胃腸障害や貧血、食欲不振、口腔粘膜の炎症などが見られます。
<ステージ4>
末期の腎不全状態になります。残存している腎機能が10%以下です。尿毒症に陥り、食欲廃絶、沈鬱や痙攣、意識障害、呼吸の異常などが見られるようになります。おしっこは濃縮されず薄くなり、量が少なくなることや全く出ないこともあります。

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病はさまざまな腎臓の病気の進行によって発症します。原因となる病気としては、下記のようなものが挙げられます。
・先天性疾患
・免疫疾患
・腎アミロイド症
・腎盂腎炎
・尿路感染症
・慢性尿路閉塞
・腎毒性物質
・腫瘍

慢性腎臓病の診断

慢性腎臓病の診断のためには、尿検査や血液検査、エコー検査、血圧測定などを行うことが必要です。
・尿検査
慢性腎臓病になると、尿比重が徐々に低下していきます。尿比重が低下すると、おしっこの色が薄くなり、匂いもしなくなります。また、尿の中に蛋白質も多く見られるようになります。
・血液検査
慢性腎臓病がすすむと、血液検査上では腎数値(BUNやクレアチニン)の上昇や高リン血症、貧血などが見られるようになります。中でもクレアチニンは腎臓病のステージの評価にも使われるとても重要な項目です。
・エコー検査
腎臓の大きさや構造の異常、腫瘍の疑いがないかなどを確認します。慢性腎臓病では腎臓は萎縮していることが多くなります。
・血圧測定
慢性腎臓病では血圧が高くなることがあるため、血圧測定も必要になります。収縮期血圧が160 mmHgを超えると高血圧となります。1度の測定では持続的な高血圧とは判断されないため、日を改めて再度測定し、やはり高血圧状態であれば、治療が必要になります。

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療はステージにより異なります。
<ステージ1>
腎臓への負担を軽減し、進行を遅らせることを目的として治療を行います。具体的には下記のような治療が推奨されます。
・腎臓に負担のかかる薬は慎重に使う
・新鮮な水をいつでも飲めるように水飲み場の環境を整備する
・定期的に血液検査を行い腎臓の数値を確認する
・原因となる病気の治療
・高血圧の治療
・蛋白尿や高リン血症が見られる場合には食事療法や投薬
<ステージ2>
ステージ2ではステージ1の治療に加えて下記のような治療も必要になります。
・腎臓病用療法食
・リン吸着剤の使用
<ステージ3>
ステージ3ではさまざまな症状が現れるようになります。そのため、ステージ2までの治療に加えて下記のような治療も必要になります。
・代謝性アシドーシスの治療
・貧血があればその治療
・嘔吐や食欲不振などの症状に合わせた治療
・定期的な点滴による脱水の補正
<ステージ4>
末期の腎不全であるステージ4では積極的な治療はあまり行いません。嘔吐や吐き気などの症状の緩和や脱水の補正などを行い、なるべく苦痛を減らすことを目的とした治療を行います。

慢性腎臓病の予防

慢性腎臓病の予防は残念ながら難しいでしょう。そのため、早期発見・早期治療による進行予防が大切です。慢性腎臓病ステージ3までであれば食事療法により進行を遅らせることができる場合があります。しかし、食事療法を始めるタイミングを見誤ると高カルシウム血症などの原因にもなってしまうため、注意が必要です。まずは当院獣医にご相談の上、療法食の種類や開始時期を一緒に決めましょう。


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