犬の肺水腫とは?原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清須市、大治町のみなさん、こんにちは!あま市のあま動物病院です。
今回は犬の肺水腫の症状や原因、治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
肺水腫とは?
肺水腫は、何らかの原因により肺に水が溜まってしまう病気です。肺に水が溜まることで、呼吸が阻害され、呼吸困難を起こしてしまいます。
肺水腫の症状
肺水腫になると、次のような症状が見られるようになります。
・呼吸が浅く早い
・血色が悪くなる
・呼吸困難
・咳をする
肺水腫は緊急を要し、悪化すると亡くなってしまうこともある怖い病気です。これらの症状が見られる場合には肺水腫が疑われるためなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。
肺水腫の原因
肺水腫は原因によって「心原性肺水腫」と「非心原性肺水腫」に分けられます。
・心原性肺水腫
心臓病が原因で生じる肺水腫です。心臓の機能不全により肺から心臓に向かう血流が滞ることで肺の血圧が上昇し、水分が肺に溜まってしまいます。犬の心原性肺水腫の原因となる心臓病としては、僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症などが考えられます。
・非心原性肺水腫
心原性肺水腫以外の肺水腫を非心原性肺水腫と呼びます。非心原性肺水腫の原因としては、ARDS(急性呼吸器切迫症候群)、肺炎、膵炎、敗血症、外傷、感電などが考えられます。中でもARDSは症状が重く、急を要する場合が多いので注意が必要です。ARDSは誤嚥性肺炎やアナフィラキシーショックなどが原因で発症することが報告されています。
その他には、中枢神経系の障害による神経性肺水腫や高山などの低酸素下で発症することのある高所性肺水腫も存在します。
肺水腫の診断
肺水腫を診断するためには、聴診や血液検査レントゲン検査、エコー検査などが必要になります。
・聴診
肺の中に水が溜まってくると、胸を聴診した際に「ブツブツ」や「パチパチ」という音が聴こえることがあります。
原疾患として心臓病がある場合には、心雑音が確認されることもあります。
・血液検査
血液検査で全身の状態を確認します。肺炎などの肺水腫と似たような症状を示す病気との見極めのためにもとても重要な検査です。
・レントゲン検査
胸のレントゲン撮影を行います。肺に水が溜まっていると、肺が白っぽく写ります。また、心原性肺水腫の場合、心臓の肥大が確認されることもあります。
・エコー検査
心原性肺水腫が疑われる場合、原因となる心臓病を確認するために心臓のエコー検査を実施します。小型犬の場合は僧帽弁閉鎖不全症、大型犬では拡張型心筋症が多く見られます。
肺水腫の治療
まずは肺に溜まっている水を減らすことと肺機能を補助することを目的として治療を行います。肺に溜まっている水を減らすためには利尿剤を投与することが多いです。肺機能を補うためには酸素室に犬を入れることが必要です。
重度の場合には、麻酔をかけて挿管し、人工呼吸器で呼吸を調整する必要があります。
次に、肺水腫の原因となっている基礎疾患の治療を行います。
心原性肺水腫では心機能改善のための治療を行います。多くの場合、強心剤や血管拡張剤を使用することになります。心臓病により失われた心臓の機能は基本的には治療をしても元に戻りませんが、進行を防ぐために、これらの薬は生涯にわたって使用していかなければならないことがほとんどです。
非心原性肺水腫の場合も同様に原因に合わせて治療を行います。抗菌薬やステロイド剤などを使用することが多いです。
肺水腫の予防
肺水腫は心臓病や肺炎などが原因となって生じる病気です。そのため、これらの基礎疾患を早期発見し、早めに治療を開始することが大切です。定期的に動物病院で健康診断を受けるようにするといいでしょう。
肺水腫の原因になることの多い心臓病の症状としては、下記のようなものが挙げられます。
・咳が出る
・呼吸が早い
・疲れやすい
・ふらつく
・失神する
これらの症状が見られる場合には早めに動物病院を受診しましょう。