犬の水頭症の原因と症状、治療法について解説
あま市、名古屋市、津島市、稲沢市、清須市、大治町のみなさん、こんにちは!あま市のあま動物病院です。
今回は犬の水頭症の症状や原因、治療法などについて獣医師が詳しく解説していきます。
水頭症とは?
水頭症とは、一言でいうと脳に水が溜まってしまう病気です。本来、脳は脳脊髄液という液体に浮かんだ状態で頭蓋骨の中に収まっています。この脳脊髄液の量が過剰になってしまうことで脳が圧迫されてしまい、正常な脳のはたらきや構造が阻害されてしまう病気が水頭症です。
脳脊髄液は、脳室と呼ばれる脳の空洞で血液より作られます。その後、頭蓋骨の中を循環し、吸収されることで脳脊髄液は一定の量を保っています。脳脊髄液が作られ、循環し、吸収されるというこの一連の流れに異常が出ると過剰になった脳脊髄液により脳室が拡大してしまうといった構造の変化が起こります。
頭の形がドーム状に大きく腫れたようになるほか、眼が小さい(眼球の低形成)といった特徴的な外見を示すことが多いです。
水頭症の症状
水頭症は脳のはたらきを阻害することで神経症状を引き起こします。症状の現れ方は障害を受ける脳の部位によって様々ですが、以下のような症状が一般的です。
・うまく歩けない
・立てない
・意識障害
・学習能力が低い
・外部からの刺激を受け興奮した際に混乱する
・首が傾いている
・頭が後ろを向く
・てんかん発作
・視覚障害
これらの症状は、脳脊髄液による脳の圧迫が強いほど重度になっていきます。
また、無症候性(オカルト)水頭症と呼ばれる症状が現れない場合もあります。
水頭症の原因
水頭症は先天的であることがほとんどです。特に、チワワやヨークシャー・テリア、ポメラニアン、トイ・プードル、パグ、フレンチ・ブルドッグといった犬種で起こりやすいと言われており、生後すぐから1歳くらいまでに発症します。
生まれつきの問題だけでなく、後天的な要因で水頭種を起こすこともあります。例としては、髄膜脳炎といった脳の炎症や、脳の腫瘍などにより脳脊髄液の循環に異常が出てしまうこと、脳脊髄液を過剰に産生してしまうなどがあげられます。
水頭症の診断
水頭症の診断には、レントゲン検査、エコー検査、CT、MRIといった画像診断や血液検査、脳脊髄液検査などが行われます。
・レントゲン検査、エコー検査
頭部のレントゲン検査により水頭症によくみられる大きなドーム状の頭の形、頭蓋骨の異常がないかの確認が出来ます。
泉門の開口部(頭頂部にある頭蓋骨が合わさりきっていない穴)や頭蓋骨が欠けている部位がある場合は、そこから頭部超音波検査を実施することも出来ます。超音波検査では、脳室の拡大がないか、脳実質の菲薄化がないか、脳室内に異常な浮遊物がないか、脳の血流はどうかといったことを確認できます。
・CT、MRI
これらの検査では脳室の拡大がないかだけでなく、脳の腫瘍や炎症がないかといったことも確認で出来ます。一方で、全身麻酔をかけなければ検査できないというデメリットもあるため、注意が必要です。
・血液検査、脳脊髄液検査
脳を見る画像検査だけでなく、他の病気の可能性がないかといった確認のためにも一般的な血液検査や脳脊髄液を回収して検査することも大切です。
水頭症の治療
内科的な治療は、脳脊髄液の産生を抑え、排出を促していくことで脳の圧迫を軽減させることを目的として実施されます。薬はプレドニゾロンといったステロイド剤や利尿剤などが使用されます。
また、てんかん発作が症状に現れている場合は抗てんかん薬を使用することで発作を抑えることが出来ます。
外科治療としては、チューブで脳室と腹腔内をつなぐことで過剰な脳脊髄液を頭蓋骨の中からお腹の中へと逃がす手術を行うことがあります。
水頭症の予防
水頭種は先天的な病気であることが多く予防法はありません。また、後天的な場合でも脳炎や脳腫瘍といった予防をすることが難しい病気が要因になっているため予防は難しいでしょう。
そのため、日常生活の中で犬の様子が普段と違うなと感じることがあれば出来るだけ早く受診し、早期発見。早期治療につなげることが大切です。